July, 2023

今月は、いつも通り横浜の実家からスタートした。

この記事を書いていて思うが、1ヶ月ずつ振り返っていると、どうしても月初の記憶が思い出せない。僕は一体、7月初めに何をしていただろう。

Googleカレンダーを振り返ってみると、どうやら僕は、自分の仕事とアニメ鑑賞と卓球をひたすら繰り返していたらしい。大学生の頃から変わってない!

7月13日から、僕は関西へ飛んだ。文字通り、飛行機を使って飛んだ。

現在、東京から大阪間は、LCCを使えば片道5,000円程度で移動できる。新幹線の約3分の1だ。

しかしLCCの場合「成田−関空」になってしまうのが大きなデメリットとなる。特に神奈川に実家のある僕の場合、2時間半かけて成田に向かってから、1時間半で関空に着き、1時間半かけて市街地に赴くということで、空よりも陸の移動時間の方が長いのである。

もちろん、空港までの交通費も無視できない。

以上のことから「やっぱり新幹線のほうが良くね?」と思ってしまっている僕がいる。

さて、関西で一体何をしていたのかと言うと、一応当初の目的は祇園祭と天神祭であった。祇園祭と天神祭は、どちらも日本三大祭りであり、以前、僕は神田祭を楽しんだから、今回の旅で僕は日本三大祭りを制覇することになる。

日本の民俗学者であった柳田國男は、日本人の伝統的な世界観として「ハレとケ」を提唱した。簡単に言ってしまえば、ハレが非日常で、ケが日常である。そして古来より、日本人は祭式や儀式を”非日常”と考え、ハレの日とした。

それに加えると、旅もハレになるだろう。多くの人々にとって、旅は非日常のものだ(僕は日常になりつつあるけど)。

つまり、旅先で祭りに赴くということは、ハレのハレを楽しんでいるわけで、そりゃあもう非日常的なのである。日本人である僕はまだしも、海外のゲストからしたら、凄まじいほどのハレになる。当然、彼らからしたら、素晴らしい経験だったことだろう。

海外のゲストと言えば、関西の観光客のほとんどは外国人だった。インバウンドが完全復活していたのは嬉しい限りだが、京都では現在、オーバーツーリズムが問題になっている。

オーバーツーリズムとは、特定の観光地で観光客が増えすぎたがあまり、キャパをオーバーしてしまう現象のことを指す。現在、世界中の観光地でオーバーツーリズムが課題となっている。2010年代は「どれだけ観光客を増やすか」という時代だったが、これからは「どれだけ観光客を減らすか」になるかもしれない。

ここで大事なのは、”観光客を減らしていく一方で、インバウンド収入は落とさないようにする”ということである。つまり「観光客の質を上げる」ということだ。それも、VIPを獲得するという方向性よりは、全体的に底上げしていくイメージ。

京都に関して言えば、まず交通の問題に着手する必要があるだろう。具体的には2つ。1つめは一般乗用車を規制すること。そしてもう1つは、朝と夜に分散させること。

まず現状として、京都の一般乗用車は安すぎる。駐車場も安いし、レンタカーも安い。今回の関西旅で友人と合流した際、レンタカーを調べていると、その価格があまりにも安すぎて驚いたことがあった。

特に貴船はひどかった。貴船周辺は元々細い道路なのだけれど、一般乗用車(それも多分、お金をあまり払わない人)でパンクしてしまっていた。だから、まずは一般乗用車をしっかり規制する。駐車場料金とレンタカー料金をガッツリ値上げしたほうがいいと思う。

そして朝と夜の分散については、現在、京都市が熱心に取り組んでいる最中である。京都と言えば金閣寺や清水寺などの仏閣が有名な観光名所だが、その大半は、日中でのみ参拝できる。だから観光客はこぞって昼間に行動するわけだ。

しかし京都は昼だけでなく、朝と夜も魅力的な街である。朝イチの鞍馬山登山は楽しいし、先斗町あたりの夜も楽しい。特に鴨川は、朝・昼・夜で異なる魅力を楽しめる面白い場所だと個人的に思う。

ということで京都市は「京都は朝と夜も魅力的だよ〜」とプロモーションしている真っ最中なのである。その類のポスターは、街中でよく見かけた。

でも、これでは弱いと思う。いっそのこと、交通機関のダイナミックプライシングを実施してみてはどうだろうか。10時から18時までの交通料金を値上げして、朝と夜を値下げするのである。これであれば、嫌でも観光客は朝と夜の京都を楽しむことになる。

……と、まあこんな感じに、僕は旅に赴くと、その旅先の観光ビジネスをしっかり確認するようにしている。今回の関西旅で僕は大阪・京都・滋賀・奈良・和歌山と回ってきたが、いずれの場所で僕は観光ビジネスの知見を獲得するように心がけた。

なぜ観光ビジネスに注目しているかと言われれば、日本のポテンシャルが観光ビジネスぐらいしかないからである。現在、考えられる日本のポテンシャルは自然・食・緻密なものづくり文化・歴史・アニメ・漫画あたりだと思うが、結局、これらは全て観光ビジネスに集約することができる。

個人的に印象的だったのが、アニメツーリズムだ。今回の僕の関西2週間旅の8割は、アニメツーリズムだった。そしてある日、僕は『響け!ユーフォニアム』というアニメの舞台を巡る際に、京都府宇治市にある大吉山展望台という場所に訪れた。それも、夜に。実際、大吉山展望台から見る宇治の夜景は綺麗なのだが、それ以上に、この場所は『響け!ユーフォニアム』の名シーンで登場した場所なのである。

大吉山展望台は夜になると、電灯が一切無くなるので、相当のモチベーションがない限り、登る人などいない。そう考えた僕は「今回は僕がこの夜景を独り占めするのだろう」と思っていたのだが、なんと先客が2人いた。どちらも『響け!ユーフォニアム』が大好きなファンで、しかも、日本人ではない。カタコトの英会話をちょろっと耳にした限り、中国人と韓国人だった。これは、やはりアニメツーリズムには可能性があると思わされた瞬間だった。そしてそもそも、大吉山展望台をどれだけの京都人が知っているのだろうか。

何事も、やはり足を使わないとわからないことだらけである。特に観光に関して言えば、インターネットで観光名所を見たり、大学にこもって研究したりするだけでは、わからないことが多いだろう。実際に足を運び、自分の目で見る必要があるのだ。

ちなみに、僕は観光名所だけでなく、その場所に訪れる”人”も見るようにしている。一言で外国人と言っても、アジア系なのか欧米系なのかで全く異なるし、当然のことながら、年齢層でも印象は大きく変わる。

まだまだ短い僕の旅歴によれば、やはり教養を感じさせる場所は、欧米系の観光客が多い。特に自然を感じさせる場所では、それなりに旅慣れた欧米系の方々に出くわす。

これは5月のお話だが、僕が青森県八戸市の”みちのく潮風トレイル”という散策路で歩いていた時に、2人の白人の老夫婦とすれ違った。その瞬間、僕は「この2人は旅慣れている」と感じた。現段階でロングトレイルが、情報感度の高い人に注目されているということもあるし、この八戸市という街が、世界的に権威のある旅行雑誌『コンデナストトラベラー』の『2022年のベストホリデー』にて、日本で唯一セレクションされた場所だからだ。当然のことながら、そんなことはアジア系はおろか日本人だって知らないだろうし、僕が知ったのも2023年5月になってからだ(発表されたのは2021年11月)。

先ほども述べた通り、情報感度の高い旅人、とりわけ、世界中のあらゆる観光名所を渡り歩いた旅人は、新たな旅先を求めている。傾向としては、自然がキーワード。アグリツーリズムやロングトレイルのように、自然豊かな場所で送るライフスタイルを楽しむのが、現代的な旅人なのである。

なぜここにきて”自然”なのかと言われれば、それはコンピュータがあまりにも進化しすぎているからだろう。そしてコンピュータが”自然”になりかけているからこそ、感度の高い人たちは”本物の自然”に回帰しているという見方もできる。

多くの人々は、AIのような最先端テクノロジーが未来だと言うが、これほどまでに複雑になり、もはや自然になりつつあるコンピュータの未来は、本物の自然にあるのではないかと思う。

僕は、ここから約10年ほどかけて、自然を大事にしていきたいと思う。自然と触れ合う時間を増やし、画面が放つ光に惑わされず、偉大なる太陽と、僕たちをやさしく照らす月を大事にしたい。

……

ここまで書いていて思うが、どう考えたって1ヶ月ごとに振り返っても、僕が思ったことを全部書き出せない。かと言って、毎日は面倒。

そこで「太陽太陰暦」に基づいて、振り返ってみようと思う。具体的には、新月と満月の日に、振り返りを行う。これであれば、2週間の1度のペースで振り返りが可能だ。

次回は8月2日(旧暦だと六月十六日)。新月と満月の日に更新されるこのレポートを、ぜひ楽しんでいただければ幸いです。