『人を動かす』の漫画版を読んでみた。
多くの人に読み継がれる古典を漫画化するアプローチは、個人的にあまり興味がなかったのだが、活字に慣れていない若者や高校生のことを考えると、一定の需要があるように思う。
事実、僕はこの本を高校生にプレゼントした。今となっては僕も活字の本ばかり読むが、高校生のときは活字がどうもダメで、中々読書する気になれなかった。
正直なところ、本書の漫画化のアプローチは、あまり上手くないと思う。若干説明的すぎるというか、漫画としてのクオリティが低いし、要約のアプローチも上手ではない。だが活字に慣れていない高校生が読むのであれば、これぐらいの漫画で十分だろう。
さて、肝心の内容だが、個人的に『人を動かす』の内容は、100%取り入れるのは良くないと思う。やはり組織運営には適度な緊張感が必要だと思うからだ。逆に言えば、あまりにも緊張しすぎている人に、本書はおすすめできる。事実、僕がその高校生に本を贈ったのも、それが理由だった。
必ずしも厳しく接すれば、人が動いてくれるというわけではない。それが圧倒的に恐怖によるもので、動かなければ生きていけないような状況であれば、人は半強制的に動く。例えば、めちゃくちゃ怖い先生がいる強豪校の部活動とか。それか、1つのミスで命取りになる戦場であれば。しかし多くの場合、そういった組織はほとんどない。ある程度の自由と緊張のバランスが重要になる。
僕も本書を読んだが、あらためて本書の内容を取り入れすぎるのはやめようと思った。僕の場合、どちらかと言うと、悪い意味で優しいと思うからだ。ただし本書の中で登場する「相手の立場で考える力」だけは、大事にしたいと思っている。