アップリンク吉祥寺で『generAIdoscope(ジェネレイドスコープ)』を鑑賞した。
本作は日本初の劇場公開オムニバスAI映画で、以下3作で構成されている。
- 『モンキーズ・オデッセイ』:猿が人間のように知識を得る過程を描いた作品。映像は実写的
- 『AZUSA』:夢の世界を行き来する少女の物語。映像はアニメ
- 『グランマレビト』:「自練機械」と呼ばれる自動進化ロボットのSF作品。映像は実写的
3作品とも、脚本以外のほぼ全工程を生成AIが担っている。アニメ好きの僕としては『AZUSA』が目当てだったが、去年の段階で制作がスタートしていることもあり、技術的に少し古い。
一般的なクリエイティブ系ソフトの場合、数年に1度のペースでメジャーアップデートがあるが、生成AIの場合、1ヶ月ペースでできることが大幅に進化するため、ちょっと時期がズレるだけで表現が大きく変わる。
3作品とも冒頭のエスタブリッシングショットだけ半端ないクオリティだったが、ここだけ超最新の生成AIを利用したのだと推測する。
前提として、生成AIは背景が得意だ。特に実写的かつ情報量の多い背景がめちゃくちゃ得意で、このエスタブリッシングショットは大迫力である。一方で人物の表現が比較的苦手で、特に複数人いる場合と、カメラワークが発生するカットが苦手だ。
画像生成AIの場合、ようやく最近になって複数人にも対応するようになったが、動画生成AIは、まだまだである。
ところで、僕はChatGPTを始めとする文章生成AIとmidjourneyなどの画像生成AIを毎日のように使っているが、映像生成AIと音楽生成AIはあまり使わない。だから、たまに焦ることがある。映像や音楽もやらなくていいのか、と。
たまたまXでこんなMVを見つけた。
なんだかんだこれまでたくさんのAI生成によるMVを見てきたが、これは正直驚いた。本当にすごい。
そもそも動画生成が台頭し始めたのは、去年の冬だったと思う。当時もすごかったけど、まあぶっちゃけ使い物にはならなかった。しかしこのMVの完成度は凄まじいものがあるし、そして『generAIdoscope』もすごいクオリティだった。映画として成立している。
一方で、本作を鑑賞したときに、僕の中で「動画生成AIを使わなきゃ!」という焦りは消えた。AIが信じられない速度で進化している時代で、AIを使いこなそうと思っても、振り回されるだけである。SN
SにAIコンテンツをアップロードしまくるよりも、もっと根本的なところ、例えば映画や音楽を始めとする芸術の歴史や美術史、メディアの性質の違い、マーケティングなどを学ぶことに、時間を使ったほうがいいのではないだろうか。
今のうちに知識を蓄え、引き出しを増やし、様々な領域をカバーできるようになることが、結果としてクリエイティビティーの拡張につながるのではないかと思う。どうせAIは信じられない速度で進化するわけで。今日と明日では世界戦が全く違う。
AIの登場でアウトプットの速度は信じられないほど速くなったが、インプットの速度は変わっていない。AIであれば、一瞬で小説を書き上げられるかもしれないが、『不思議な国のアリス』を人間が読むには2時間程度かかる。
時間は有限なわけで、そしてAIによって「制作」は民主化されるわけだから、僕たち人間はもっと学び、そして遊びまくったほうがいいと『generAIdoscope』を鑑賞して実感した。