経済ジャーナリストの内田裕子の『横浜イノベーション!』を読んでみた。
僕は2023年8月から約4ヶ月間、横浜市にある黄金町に滞在していることになっている。ということで、せっかくだから横浜についてもっと深く理解し、それを1冊の写真集的なやつにまとめようと思っている。その中で、実際に横浜を見て回るフィールドワークだけでなく、書籍を用いた座学にも勤しむことにした。その中で僕が手に取ったのが本書である。
僕は何冊か「横浜」をテーマにした書籍を読んでみたけれど、その中でも本書は非常によくできている。横浜の歴史の解説から始まり、その中から横浜の活路を見出すアプローチが、僕の考え方にマッチしている。
横浜という街は吉田新田から始まり、ペリー来航による開港、そしてみなとみらい開発で今に至る。これまで、いくつものイノベーションが横浜という地で巻き起こったわけだが、これらのイノベーションはどれも「外部」から来た者によって引き起こされたものなのである。だから横浜は、外圧に屈することで初めて真価を発揮できるのだ。と、本書では述べられている。
この考え方に則ると「IR誘致はどう考えても賛成すべきだった」ということになる。もし、サンズによって横浜にIRが建設されるようになれば、日本中から面白い人材が横浜に集まり、IRをうまく設計できれば、それこそ世界中から面白い人材が集まるようになるだろう。これぞ、横浜の必勝パターンなのである。
だが残念なことに、IR誘致は撤回されてしまったため、当分、横浜は苦しくなるんじゃないかなと僕は考えている次第だ。
横浜についての僕の考えは、今度出版する予定の写真集に詰め込もうと考えているが、ざっくり、現状の考えについて簡潔に書いていこうと思う。
- 横浜という街は、全国的に見ても歴史が浅い街である
- 横浜は外圧によって成長してきた街である
- 横浜はその他の地方都市よりも外国人観光客が少ない街である
- みなとみらいは官民連携が強みである
- 横浜市の人口が縮小に転じ、日本社会全体の縮小化が進んでいることから、世界に目を向ける必要があるのが必要不可欠
以上の点を踏まえても「やはりIRは絶対に実施すべきだった」というのが僕の考えだ。住民はIRのことを「カジノだ!ギャンブルだ!」と騒ぐが、それだと多くの多重債務者を生み出していると思われる横浜駅西口前のパチンコエリアはどう説明すればいいのだろうか。もしIRを導入できれば、その代わりにパチンコ業界に規制をかけることも十分にできたはずだ。
それに何よりも、IRは、横浜に絶対的に足りていないインバウンドを生み出せる数少ない手段だった。しかしその大チャンスを、横浜はみすみす逃してしまった。横浜では「スポーツビジネスが上手くいっている!」とか「大企業を誘致できた」とか「夜景が綺麗だ!」と多くの市民及び政治家が口にしているが、これらはいずれも日本人だけに当てはまる話であり、国際的な視点が著しく欠けている。はたして「大人気!」とされている横浜スタジアムの試合に、外国人はどれだけいるのだろうか。せっかく横浜には国際展示場によるMICEや国際旅客船で富裕層が訪れてくるのに、そこから利益を稼ぐ手段がほとんどない。だから多くの人は、横浜に着いた後、新横浜でピューンと京都に行ってしまうのである。実際、僕が横浜を見て回っても、みなとみらいに外国人はほとんどいなかった。一方で、国際展示場で開催されていたポケモンのイベントが実施された時はたくさんの外国人がいて、だからこそIRは非常に大きな収益源になり得たはずだった。
今回、IRを拒否したことで、横浜は縮小化間違いなしの日本社会と運命を共にする決断をしたことになる。あと数十年もすれば、横浜はきっと苦しくなるだろう。勘のいい若者は「共倒れしたくない!」ということで横浜及び日本を離れていくのだろうし、当然、外国人もやってこない。僕も、横浜と心中するつもりはさらさらない。
今はまだ固め切っていないけれど、一応、IRを拒否した後の横浜が実施できそうなアイデアを、僕なりに考えて、それを写真集で述べようと思っている。