旧暦二〇二三年八月十五日(2023-0929)

長脚

先日、10年ぶりくらいに横浜スタジアムで野球観戦した。シーズン終盤ということもあり、チケットはほとんど埋まっていたので、友人と2人で立ち見席。でも、普通に楽しかったし、むしろ立ち見席の方がいいまである。

僕は身長が185cmもあり、しかも脚長の体型だ。周囲の人からはかなり羨ましがられ、悪い気もしないのだが、不便な点がいくつかある。そのうちの1つが、座席問題だ。僕は、乗り物の中でも電車が大好きなのだけれど、なぜ大好きかと言われれば、それは脚を自由に伸ばせるからである。逆に、僕は特急列車があまり好きじゃないのだが、それは脚を伸ばせないからである。もちろん、車、バス、タクシーもあまり好きじゃない。脚周りが窮屈だから。LCCに乗り込む際も「もっと脚が短かったら快適なのに……」と思うことが何度もある。

そう考えると、脚が長いのはコスパが悪いのだろうか。決してそんなことはない。例えば野球観戦であれば、僕は窮屈な座席タイプのチケットよりも、立ち見席の方が快適である。電車も、特急列車よりも普通の電車の方が快適。

長脚や高身長は、それなりに苦労するというお話でした。

iPhone15 Pro Max

2023年9月12日、Appleの新型iPhoneが発表された。iPhone15シリーズだ。

今回の発表で最も話題になったのは、多分「USB-C」搭載なのではないかと思う。従来のiPhoneはLightning端子だったのだが、今回のiPhone15からUSC-Cが採用されることになった。理由はEUによる規制だ。EUは「2024年秋までに全ての小型・中型の携帯電子機器の充電端子をUSB-Cに制限する法案」を可決している。建前は「ムダなUSBケーブルを削減するため」というSDGs的な理由となっているが、本音は、AppleのLightningケーブル市場の排除だろう。近年、EUはアメリカのカモから脱却するためにGDPR(一般データ保護規則)、DSA(デジタルサービス法)、DMA(デジタル市場法)などのビッグテック排除法令を適用させてきている。余談だが、これらの法律が定める”ビッグテック”に該当しないのがツイッターで、DSAやDMAが可決され始めるタイミングで、イーロン・マスクがツイッターの買収を宣言したのは、あまり注目されていない。

さて、もちろん僕は新型iPhoneに乗り換えることにした。iPhone15 Pro Maxだ。決め手は、やはり光学5倍ズームにある。iPhone14 Pro以降、4,800万画素のProRAWが撮れるようになり、仕事でもiPhoneを使えるケースが増えている印象がある。だがiPhoneは物理的にレンズとセンサーのサイズを大きくできないので、ズームと夜景に弱かった。
これまでの光学3倍ズームでは厳しい局面も多く、特にイベントや祭りをスナップ撮影するときに「あともう2倍ズームできたら……」と思うことが何度もあった。そのタイミングで、光学5倍ズームの登場である。この光学5倍ズームはPro Maxにしか搭載されていないので、僕は迷うことなく、iPhone15 Pro Maxを購入したというわけだ。

ちなみに、ネット上では「もうiPhoneにイノベーションは起きない」という言説が見受けられるが、そもそもiPhoneどころか、スマートフォン領域全体でイノベーションが起きることは、もうないと思う。本当に、カメラ、ディスプレイ、半導体ぐらいしか、革新の余地がない。Appleはスティーブ・ジョブズを亡くして以降、イノベーションのジレンマに突入しかけている。近年はいよいよ金融事業にも手をだすようになり、本格的に「製造業としてのApple」が終わりを告げようとしている。

そんな中、少し面白そうな報道もある。それがAppleのDisney買収説だ。現在のAppleに足りていないのは、間違いなくコンテンツで、Appleは「箱」を提供することはできているが、肝心の中身がない状態にある。そこにDisneyという最強のコンテンツが差し込まれれば、いよいよAppleは科学と魔法のどちらも手にすることになる。

DisneyのCEOであるボブ・アイガーは、近年、自社が保有するケーブルTVネットワークを売却する方針を固めており、ESPN(スポーツチャンネル)を後押しする配信パートナーを探している趣旨を明らかにしている。また、AppleのVRヘッドセット「Vision Pro」向けのコンテンツを制作することも発表している。ちなみにこれはMetaにとってはとんでもない大打撃で、正直言って、VRはコンテンツありきになる可能性が高く、その点でAppleはVR・AR業界で一気に優位に立った。

AppleがDisneyを買収する日は、やってくるのだろうか、株価的には十分に買収可能な関係性にあり、実際、AppleはDisneyを買収したいと思うが、当然、様々な課題があるので、タイミングを探っている最中だろう。

なお、個人的に、Appleは日本のアニメ業界も狙ってるんじゃないかなぁと思っている。

J-POPと洋楽

音楽制作を始めるにあたり、僕はモニターヘッドホンを購入することにした。モニターヘッドホンとは、解像度や原音に忠実な音を出せるヘッドホンのことを指す。録音スタジオや放送局に置いてあることが多い。

モニターヘッドホンといえば、SONYのMDR-CD-900STだ。通称「赤帯」と呼ばれるこのヘッドホンは、日本国内のレコーディングスタジオであれば、まず間違いなく置いてある。

一方、海外では、この「赤帯」が選ばれることはない。代わりに「青帯」と呼ばれるMDR-7506が普及している。

MDR-CD-900STは中高音域でモニタリングしやすい代わりに、低音が壊滅的に弱い。出力も弱いし、解像度もダメ。素人の僕が聞いていても、低音が非常に聞き取りづらかった。一方、MDR-7506は、全体的にバランスがよく、特に低音がいい。

現在、日本国内でも「MDR-CD-900STは時代遅れ」という意見が見られるようになり、その最大の要因が低音にある。現代音楽では低音の重要性が非常に高まっているため、MDR-CD-900STはちょっと微妙な感じになっているのだ。

ここに、J-POPが世界的に見て、遅れている理由がある。洋楽シーンにおける最前線はクラブなのに対し、日本の音楽シーンにおける最前線はカラオケなのだ。だから洋楽では、それなりにサイズのあるスピーカーで重厚な低音を出せる環境であるクラブを想定しているのに対し、J-POPでは歌うときの気持ちよさを重視するため高音を用いた楽曲が増えている。日本で、本物の低音を聴けるケースはほとんどない。なぜなら、外国人ほどクラブに行かないから。

K-POPがJ-POPと違う点として、まず海外進出を前提にプロモーションを組んでいる点が挙げられるが、それ以前に、欧米人のクラブ文化に馴染んだ楽曲作りをしている点に注目したい。K-POPの楽曲はクラブで流れたらそれなりに盛り上がる。一方で、髭男、スピッツ、バックナンバー、坂道、ジャニーズなどの代表的なJ-POPをクラブで流しても、多分イマイチだ。なぜなら、そもそもクラブ文化に馴染む曲作りをしていないから。ひいてはカラオケ文化に馴染む曲作りだから。

それにJ-POPには恋愛ソングというものがある。もちろん洋楽にもラブソングはあるが、恋愛ソングはない。恋と愛を混同しているのは日本特有の文化だ。一般的に日本人の多くは、恋愛ソングを聞いて感傷に浸るが、これは非常に中毒性が強く、だから曲もバンバン売れる。ベストチャートの上位でこれほどまでに恋愛ソングの割合が大きいのは日本ぐらいではないだろうか。
女の子が失恋したら、決まって失恋ソングを聴き込むか、カラオケでストレス発散するかが相場である。もちろん、恋愛ソングを聴く際は、構造的に低音が出づらいイヤホンを装着し、ひたすら感傷に浸る。

近年、世界的に注目されている日本の80年代のシティポップや歌謡曲は、そもそもJ-POPという単語が存在する前の音楽だった。J-POPが登場し始めた90年代も、小室哲哉や宇多田ヒカルの活躍で、米国スタイルを日本の歌謡曲に組み合わせた斬新な楽曲が多かった。1970年代終わりに登場したYMOがもたらしたテクノポップは、間違いなく世界的に最先端だった。1990年代までの日本の音楽シーンは、少なくともイギリスのUKロックよりは先を走っていたのではないだろうか。

だが、2000年代以降、日本の音楽シーンはどんどん遅くなっていった。「一周回って最先端」という発想ならまだしも、単純に、カラオケ文化を捨てることができておらず、シンプルにガラパゴス化しているだけだと思う。日本の音楽業界は茹でガエル状態なのだ。

ということで、せっかく言語の壁を越えることができる”音楽”というメディアに参戦するのであれば、どう考えても海外に焦点を当てた方がいいと考えて、僕はMDR-7506を購入した。制作する楽曲はいずれも低音を重視したものだが、日本の誇る音楽文化である80年代のシティポップ、70年代のテクノポップ、戦後から続く歌謡や演歌の領域を活用した楽曲を作っていきたい。少なくとも僕は、平成や令和のアイドルソングより、昭和のアイドルソングの方が可能性盛り沢山なのではないかと思う。そして何よりも、僕はアニメをはじめとした日本のポップカルチャーが好きなので、これも活用していきたい。

だから基本的には、古き良きの楽曲を活用したLo-Fi、逃避的な要素盛り沢山の萌え萌えなハッピーハードコア(電波ソング)、そしてこの2つのジャンルの要素を散りばめたポップス。この3つが僕の楽曲制作の柱になりそうである。